株式会社ファーストリテイリング/ユニクロ
株式会社ユニクロ
営業2部 部長 守川 卓



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大学卒業後、イベント制作会社に入社し、2000年9月に中途採用にて㈱ファーストリテイリングに店長候補として入社。
その後店長に昇格、3店舗の店長として実績を挙げ、持ち前の商売センスとリーダーシップを発揮し、スーパーバイザー2年半、ブロックリーダー2年半を経験後、2009年3月より営業部の東日本を担当する部長となり、現在に至る。

5年後は、FRの中で経営者になっていたい。
そういう目標を持てる会社ってすごいと思います


いずれは本部でマーケティングをやりたいという思いを持って、入社しました

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Q:守川さんのご経歴と、ファーストリテイリング(以下:FR)に入社されたきっかけについて教えていただけますか。

守川氏(以下:M):大学を卒業後、学生時代にアルバイトをしていたイベント制作会社にそのまま新卒として入社して、イベントの企画から製作、運営までを手掛けていました。
二年半程経った頃から会社の経営状態が厳しくなり、転職を考えていた頃、FRのマーケティング職の募集広告を見ました。当時は、FRのことは全く知らず、ユニクロの店舗にも行ったことがありませんでしたが、もともとマーケティングやアパレル業界に興味がありましたので、これだ、と思い、採用面接を受けに行きました。
面接を受けたその日に、当時の副社長から内定と言われ、まずは現場で勉強をして経験を積み、店長として成果を出してから、本部でマーケティングをやろうという思いを持って入社しました。

Q:入社当初は、いかがでしたか?

M:まず、店舗で働く周りの人は、皆若くて仕事ができることに危機感を持ちましたね。当時、僕は26歳で、店長は同じ年、同期は新卒だったので22歳、スタッフには20歳くらいの人もいました。
とにかく誰よりも仕事をして、早く業務を覚えたい、早く、早く、といつも焦っていました。入社して半年で店長になるということを目標にしていたので、それに向けてやれることは何でもやりました。

Q:店長になられてからは、いかがでしたか?

M:それまでの上司の評価で、「守川ならきっと優秀な店長になる」と言っていただいていたので、自分でも問題なくできる気になっていたのですが、実際に店長になってみると、全然思っていたようにはいきませんでした。
例えば、店長になる前は、店長が決めた方針をうまくメンバーに伝えて協力してもらうことが円滑にできていたのですが、いざ自分が店長になってみると、お店の中のことを全部決めていかなければいけないということに必死になるあまり、周りが見えなくなってしまいました。部下に対しての指導の仕方も、相手のことを考えずに一方的な言い方をして、自分の要求だけを通していたと思います。悪く言うと、スタッフ一人一人に対して、駒みたいに接していました。大失敗でしたね。



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Q:その時の具体的なエピソードがありましたら、お聞かせいただけますか。

M:当時の僕は、オープンから閉店まで、ずっと売場でスタッフの指導をして、仕事もこなし、毎日夜遅くまで働きました。
店を良くするためには、長い時間仕事をして、スタッフに細かく指導をすることが、店長として正しいやり方だと思っていたんです。
でも、配属されてから2ヶ月くらい経っても売上げは一向に上がらず、自分のやり方は正しいはずなのに、どうして店は良くなっていかないんだろう?と思っていました。
そんなある日、いつものようにスタッフに指示を出したときに、ふと、あるスタッフが僕の顔を見ずに下を向いて返事をしていることに気付きました。注意して見てみると、他のスタッフも皆そういう状態になっていました。
これはまずい、と思い、翌日店を閉めてからスタッフ全員を呼んで、「不満がある人は手を挙げてくれ。」と言ったら、ほぼ全員が手を挙げ、愕然としました。理由を聞いてみると、堰を切ったように色々な意見が出てきて、その時はそれを受け止めることが非常につらかったです。
それからは、自分のやり方を180度変えました。スタッフを指導するときも言い方を変えて、「皆で一緒に店をつくっていきたい」という思いを伝えました。
そういうことを続けるうちに、少しずつうまく回るようになっていきましたが、それまでは僕の思いはまったく伝わっていなかったし、伝わらないような指導の仕方をしていたんだということを改めて痛感しました。あの時初めて、人間関係において挫折を味わったと思います。
正直に意見を言ってくれた当時のスタッフに感謝していますし、とてもいい経験になりました。

Q:そのつらかった時期に、辞めたいと思ったことはありましたか?

M:もちろん、ありました。休みの日に店を見るだけで胃が痛くなるような状態で、休みの日は実家に帰って、少しでも店から離れるようにしていました。

Q:そのような状態でも、お辞めにならなかったのは、なぜなのでしょう?

M:当時の上司だった、スーパーバイザーの存在が大きかったです。すごく怒られることもあったし厳しい人でしたけど、僕がどんなに落ち込んでいても、常に味方になってくれました。
それに、入社当初からの目標であった店長になることができて、これからだと思っていた時だったので、そこから先の目標のためにも、今このつらさを乗り越えなければいけない、ここで挫けたら終わりだと思いました。


現場で経営が学べる。一人ではなく、皆で同じ方向に向かって成果を出していくことが、たまならなくおもしろいです

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Q:そこから先の目標というのは、どのようなことですか?

M:先程お話した通り、入社当初は、いずれ本部でマーケティングをやりたいと思っていましたが、店長として店をうまく回せるようになってきた頃から、「現場の仕事が合っているな」と思い始めました。当時のブロックリーダーが、意見は尊重してくれるけど、だめなときはだめだと叱ってくれる人で、その人のことを尊敬していたので、僕もこのまま現場で経験を積んで、いずれは店長から目標とされるようなブロックリーダーになりたいと思うようになりました。

Q:守川さんがそれほどまでに感じる、「現場のおもしろさ、店長のおもしろさ」とはどのようなところでしょうか?

M:店長は、一つの店の経営者のようなものです。売上げ、サービスレベル、売場の完成度、スタッフの教育等、それぞれを決めることができて、それを自分だけではなく、スタッフ全員に協力してもらいながら、皆がひとつの方向に向かって、結果を出していきます。僕はそこが、たまらなくおもしろかったです。
良い結果が出たときのスタッフの嬉しそうな顔を見ると、すごく嬉しいし、自分だけではなく、周りも一緒に成長しているという実感を味わうことができます。そういう仕事はあまりないと思いますし、部下、上司、お客様、常に多くの人と関わることができることも、すごく楽しいと思います。



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Q:守川さんは、これからのユニクロの店舗にはどのような人材が求められると思いますか?また、守川さん自身はどのような人と一緒に働きたいと思われますか?

M:まず、人が好きであること。そして、これは店舗に限らず、どのような職種でも言えることかもしれませんが、どんなことでも素直に吸収する前向きな姿勢と、困難から逃げない精神力がある人が求められていると思います。
能力があっても、会社を自分のキャリアアップの一つとしか考えていない人は難しいかもしれません。
「20年先のユニクロをこうしていきたい」という思いのある人と、一緒に仕事をしていきたいと思っています。

Q:採用面接の時、会社への思いよりもまず、具体的な職種の希望を挙げられる人が少なくないと思いますが、入社当初はマーケティングを希望されていた守川さんが、現場で経験を積まれた今、本部での仕事についてどのように思われますか?

M:もちろん、マーケティングなどの専門職も、会社が成果を出していく上でとても重要な仕事です。
事業全体を見ることができるようになりたいか、ある職種の専門性を身に付けたいか、どちらの志向であるのかにもよると思いますが、もし前者なのであれば、本部では部分的な仕事になってしまうので、まずは現場で経験を積むことがとても大切だと思います。
僕も、入社当時、「現場を経験せずに本部へいっても通用しない」と上司から言われたことがありますが、今はその言葉の意味がよくわかります。
先程、店長は経営者のようなものだと言いましたが、ある程度の制約がある中で、店長は、財務、経理、マーケティング、販促、在庫コントロール、MD、スタッフ教育等の役割を全て担っていて、その結果が売上げとして毎日数字に表れます。それぞれの機能が一つとなって全体を動かしていかなければ、良い店づくりはできません。僕は、店長としてそれらを経験してはじめて、本部での職種の役割も見えてきました。
例えば、CMをつくる立場だったら、お客様の「今日」の反応はわからないと思いますが、売れる商品かどうかは、売場でお客様の動向を見ていればすぐにわかり、売れる、売れないの要素もダイレクトに感じることができます。
本部での仕事の成果も、最終的には、現場に集約され、お客様の声として表現されることが多いのではないかなと、僕は思います。


これからは、『全員経営』をもっと意識していく必要があると思います

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Q:今のFRが守っていかなくてはいけないものと、今後、変えていかなくてはいけないことは、どのようなことだと思われますか?

M:全国で店を運営していく上での、規律やマニュアルが整備されており、全店が同じ基準を理解して、徹底できているところは強みだと思います。今日決まった方針が、翌日には全店に伝わり、各店の店長がそれを理解してすぐに実行していく、スピード感のある仕事の仕方、文化、風土は、これからも守っていきたいです。そして、今後グローバルに展開していく中でも活かしていきたいと思っています。
一方で、変えていきたいと考えているのは、店舗から経営層になる人材をもっともっと増やしていくことです。
会社が大きくなるにつれて、仕組み化が進み、店舗運営はしやすくなりましたが、店長はオペレーションをこなすことだけに集中し、競争意識が若干薄れてきてしまっているように思います。
試行錯誤しなくなってしまったら先はないと思いますし、世界で勝負をしても勝てないと思いますので、現場がより新しい要素を考え、判断していく癖をつけていかなければいけないと思います。
社長がよく、「全員経営」という言葉を口にしますが、そこをもっと意識する必要があるのではないかと思います。



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Q:最後に、守川さんは、5年後、どのようになっていたいですか?

M:営業部長になってからはっきりとした目標ができました。
FRの中で、経営者になりたいと思います。
今までの経験が活きるという自信がある一方で、まだまだ足りない部分もすごく多いので、仕事を楽しみながら、もっと勉強をして経験を積み、5年後には、最終責任者として一つの事業を任されるような立場になっていたいです。
35歳でそういうことを目標にできる会社ってすごいと思うんですよね。そういうチャンスは他の会社よりも圧倒的に多いと思いますので、積極的にチャレンジしていきたいと思います。


日時:2009年5月22日(金)
形式:株式会社ユニクロ 守川氏・スピリッツ 中條 対談